「毛豆腐」
これ、なんと読むかわかりますか?マオドウフと読む、中国の発酵食品です。文字通り、見た目はまるで毛の生えた豆腐です。豆腐の表面を覆う、ふわふわした白い毛のようなものは、なんと、毛カビ。さすが、中国4000年の歴史。食べ物も奥が深いですね。
今回はこの興味深い食べ物、毛豆腐について詳しく調べましたので、ご紹介していきます。
この記事でわかること
- 毛豆腐ってどんな食べ物?
- 毛豆腐の作り方
- 毛豆腐を使った料理
- 日本で毛豆腐を食べられる可能性がある料理店
毛豆腐の英語訳は、
「Hairy Tofu」だよ!
毛豆腐は伝統食品
Old District of Tunxi (Huangshan City) – 屯溪老街 by mompl pic.twitter.com/RsR9OFBAOq
— onderbuik gevoelens (@leuketwits) May 10, 2015
毛豆腐は、中国・安徽省南部に位置する黄山市周辺の伝統食品です。
黄山市の中でも、国内外から多くの観光客が集まる屯溪老街を訪れれば、すぐに毛豆腐を使った料理を食べることができます。
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— Marvelous Anhui 美好安徽 (@MarvelousAnhui) November 3, 2022
驰名中外的佳肴——黄山毛豆腐
— Marvelous Anhui 美好安徽 (@MarvelousAnhui) April 29, 2022
俗话说,徽州一大怪,豆腐长毛上等菜。古徽州城里好些摊户,边煎毛豆腐,边敲竹板,嘴里还哼着徽腔小调:“竹板响,喉咙痒,夹(吃)三块,六分洋(钱),一怀酒,真舒畅”~🤤#Anhui #徽州 #中国安徽 #徽菜 #豆腐 pic.twitter.com/OGm0ZkDThw
屯溪老街でも、かつては毛豆腐を売りにする店はありませんでした。各家庭で作るか、料理屋でも市場で仕入れた物を提供していたそうです。2012年に、ドキュメンタリー番組「舌尖上的中国(日本語訳:舌の上の中国)」で毛豆腐が紹介されて、中国国内でも注目されるようになり、観光客向けに毛豆腐を出す店が現れました。
【発祥伝説】明の初代皇帝・朱元璋が毛豆腐を広めた
朱元璋(1328〜1398)
— 世界の英雄bot (@eiyu_bot) February 14, 2023
明王朝初代皇帝、洪武帝とも。貧農から皇帝に昇り詰めた出世者。
乞食僧として放浪中に紅巾の乱が起こり反乱軍に加わる。軍で頭角を顕し南京を征圧すると、鎮圧側に転じ江南を平定。また、元を北に追いやり中華を統一し明朝を興した。
即位後は独裁政治をおこなった。 pic.twitter.com/hK1HRudHHO
中国では、明(1368年~1644年)の初代皇帝である朱元璋が、毛豆腐を広めたという伝説があります。
毛豆腐と朱元璋の伝説①
戦いに敗れた朱元璋が、徽州・休寧県(現在の安徽省黄山市)に逃げてきた時のこと。部下たちは食べ物を探しに出かけました。干し草の下から、農民たちが隠しておいた豆腐を発見。豆腐はカビまみれになっていましたが、他に食べるものもなく、部下は炭火でよく炙ってから、朱元璋に食べさせることにしました。意外なことに、その豆腐はとてもおいしく、朱元璋は喜んで食べたそうです。その後勝利を収めた朱元璋が、部下たちを労うため、料理人にこの毛豆腐を作らせ、振る舞いました。以来、毛豆腐は徽州の伝統料理となりました。
毛豆腐と朱元璋の伝説②
朱元璋が、兵士を派遣した時のこと。兵士の食事となるはずだった豆腐の配達が遅れ、豆腐にカビが生えてしまいます。貴重な食料であり、朱元璋は料理人に、どうにか工夫して食べるよう命じました。その後、幾度かの改善を経て、毛豆腐の料理が確立されていきました。
毛豆腐と朱元璋の伝説③
徽州の貧農の家に生まれた朱元璋は、幼いうちに、飢饉で家族を失います。金持ちの家の使用人として、昼間は牛の放牧、夜は豆腐作りをして働いていました。後に朱元璋は解雇されて、乞食をするようになります。不憫に思った使用人仲間たちが、ご飯やおかず、豆腐などを密かに持ち出しては草むらに隠しておき、朱元璋はそれを食べて飢えをしのいでいました。ある時、草むらに隠していた豆腐にカビが生えてしまいます。空腹に耐え切れなかった朱元璋は、これを焼いて食べてみると、芳醇な香りがして、とても美味しかったそうです。時は流れ・・・元朝に反旗を翻した決起軍の、リーダーとなった朱元璋。10万の大軍を率いて徽州に差し掛かった時、昔のことを思い出し、従軍料理人にあの豆腐を作らせます。以来、毛豆腐が徽州に広がりました。
ストーリーはいくつかありますが、カビの生えた豆腐を、朱元璋がやむを得ず食べたことが毛豆腐誕生のきっかけになったようです。
毛豆腐は危険?
毛豆腐は、危険な食べ物ではありません。
でも、カビを食べたら食中毒が心配・・・!
カビの作用によって作られる美味しい食べ物は、いくつもあります。カツオ節の香りを良くするのに、重要な役割を果たすのもカビの力ですし、砂糖を加えないのに甘酒が甘くなるのも、カビの働きによるものです。ブルーチーズの青カビも、私たちに比較的身近なカビでしょうか。
パンやビールを作るときに使う「酵母」は、ご存知の方が多いかもしれません。カビも酵母同様、食べ物の美味しさを、引き出してくれます。味噌や醤油、日本酒のようにカビ・酵母・細菌と、複数の微生物による共同作業で出来上がるものもあります。
毛豆腐の美味しい食べ方
别老看美女,吃点好吃的
— D菲菲 (@ludefei1) December 12, 2022
徽菜,毛豆腐
吃过吗?好吃哦#美食 pic.twitter.com/FjpRMM3a4h
毛豆腐を使った料理といえば、虎皮毛豆腐が有名です。その他にも野菜炒めの調味料として使用されたり、肉まんの餡に使用されたりもします。
虎皮毛豆腐 五百年余りの歴史がある代表的な安徽料理。少量の油で揚げ焼きした毛豆腐に唐辛子ソースをかけて食べます。食感は、ソフトなフレッシュチーズに似ためらかな舌触り。調理後、豆腐の毛は全く目立たなくなります。焼いた毛豆腐の表面が、虎の皮の模様に似ていることから、この名が付けられました。
安徽毛豆腐,你敢挑战一下吗? pic.twitter.com/UyZUxpMXJ3
— 蟹蟹💯(互fo) (@xiexie39950026) May 5, 2022
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— Marvelous Anhui 美好安徽 (@MarvelousAnhui) November 3, 2022
毛豆腐は、四川・雲南など中国各地で作られていますが、最も有名なのは安徽省黄山市の毛豆腐です。
毛豆腐の作り方
上質な毛豆腐を作るためには、原料選び・豆乳作り・豆腐作り・発酵、全ての工程が大切です。豆腐を発酵させることで、植物性たんぱく質が多種のアミノ酸に変化して、複雑な旨みを醸し出します。
作業手順
①豆腐を圧搾し、余分な水分を取り除く。
②豆腐を適当な大きさに切り、稲わらを敷いた蒸篭に約2~3cm間隔で並べる。
③蒸篭を2~3段積み重ねて蓋をし、20℃ 以下(15~18℃が最適)の所に置く。もし温度が、あまりにも低い場合は、保温する必要があります。
※蒸篭についた毛カビの胞子や、敷わら由来の毛カビによって発酵がすすみます。
④毛カビは、約48時間で生育を始め、3~4日目に菌糸が著しく成長します。7日目頃に、淡黄色の胞子が着生が見られたら出来上がりです。蒸篭を開けて1日冷やした後、使うことができます。
黄山市山間部は、湿度が高く温暖で、毛豆腐を作るのに適した気候です。
毛豆腐の味やにおい
毛豆腐も出て来た〜😂 くっさ😖 でも食べると美味しい😋 pic.twitter.com/biBcaD0wdf
— BB毛沢山♡ (@BBmaozeshan) June 11, 2019
#本日の昼食
— あめちゃん | 中国語学習と本と音楽 (@yuheweilai) December 28, 2019
世界遺産に登録されている安徽省の「宏村」に来ています!😆
朝たくさん食べたのでお昼は軽食😅
安徽省に来たら食べたい軽食
「毛豆腐」!
臭豆腐のように臭くはない。
でも見た目のインパクトは強烈😅
毛むくじゃらの豆腐!
鉄板で焼いて味噌をつけて食す!
私は梅干菜烧饼が好き😘 pic.twitter.com/4gdYNb3fHC
食べたことがある人によると、毛豆腐は「くさいけれど美味しい」「くさいけれどクセになる味」みたい。
納豆やブルーチーズがそうであるように、毛豆腐も、個人によって好みが分かれるそうです。
安徽料理は中国8大料理の一つ。
— MATTSU (@SYDmattsu) September 17, 2021
今回は胡适一品锅と毛豆腐を。
前者は肉団子や野菜のつみれ、ウズラなどが入った鍋。後者は発酵させた豆腐。本来は表面が白カビだらけで毛のようだからこの名が付いたらしい。
鍋はまぁ普通、毛豆腐は好き嫌いが分かれるかな。
#ma安徽 pic.twitter.com/08uVjUoMPM
2019.8 中国旅③
— ひろしょー (@hiroshotrip) August 16, 2020
武夷山→黄山
黄山に着いたら、まずは老街と呼ばれる懐かしさを感じる所(日本で言うと商店街)に行った。
ここは、筆や墨が有名でそこ彼処に売っていた。
あと臭豆腐と毛豆腐は、マジで無理だった、、 pic.twitter.com/nnqV5Cj4hJ
こんな記述も見つけました。
その昔、初めて屯溪を訪れたとき、長距離バスのターミナル近くの屋台の料理屋で、勧められるままに食べたのが毛豆腐であった。生の唐辛子と一緒に、炒めたものが出てきたのである。辛そうな赤い油に、焦げた、ショートブレッドほどの大きさの黒い固形の物体が沈んでいたのを覚えている。まわりに脱脂綿のような繊毛が切れぎれに付着しているのをみると、そのまま口にいれることにかすかなひるみを覚えたものである。皿からは、納豆を炒めたときのような、独特の香りが漂っている。箸で割くと糸、というよりもみっしりとした薄い皮膜のような強い粘りがのびる。噛むと薄い表皮の中から、木綿豆腐を脆く柔らかくしたような、ねっとりと舌にからみつく、濃厚な内容物が出てくるのであるが……
これがはたして、口中強烈な臭気のする食べ物で、味をたとえるならやはり納豆に近いだろか。その納豆のアンモニア臭を強烈にして細かくすりつぶして裏ごしし、固めて焼いたような風味、というところだろうか。納豆を焼いたときの、あの臭いをさらに強くしたような………珍味には違い無いが、ひと口かふた口で充分、というのが当時の印象であった。
ところがそれから屯溪行の回を重ねるごとにだんだん口になれ、今では屯溪にいったら一度は食べたい味になった。毛豆腐は、中国の人といえども当時はほとんど知られていなかったのである。なので同行の朋友に「屯溪に来たらぜひ毛豆腐を食べなきゃ。」とかなんとかいって食べさせているうちに、自分も慣れていったというわけである。子供のころから納豆に慣れている日本人の方が、あるいは慣れやすいのかもしれない。いまだに駄目な朋友もいるのである。
ひとつには毛豆腐自体の臭気が、だんだんと和らいでいったということもあるだろう。現在の毛豆腐は、かつて感じたほどの臭みがなく、いたってマイルドな味になっている。毛は生えているのであるが、毛豆腐同士は納豆のように糸を引くことがない。そのむかしは箸で割っても、しっかり糸を引いていたものなのであるが…….。
それは紹興や長沙の臭豆腐しかりで、個性的な風味が今風に穏やかになるにつれて全国的に受け入れられるようになった、ということかもしれない。それは日本の納豆などにも言えることだろう。納豆も思えば昔は臭かったもので、練り辛子と刻んだネギを入れないと子供心には抵抗感があったものである。それが今やネギを入れてしまうと納豆の風味がほとんどしない。
引用元 断箋残墨記
要点をまとめると、現在の毛豆腐は
- かつて感じたほどの臭みがなく、マイルドな味になっている。
- 毛豆腐同士が納豆のように糸を引かなくなった。
毛豆腐の現在と昔、味や食感・様子の違いを知ることができる、たいへん興味深い記事です。
毛豆腐は日本で食べられる?
貴州省独山地区の蝦酸と毛豆腐の仕込みです‼️
— 中國菜四川雲蓉ユンロン (@fMNVHDzvGu8rBUG) August 2, 2022
去年の夏頃、茨城県の川海老を塩漬けにしたものを使用(蝦酸)
毛豆腐は今回は白菜腐乳の仕込み用で。 pic.twitter.com/KAlsOyYnU1
日本でも、毛豆腐を食べることができるのか調べてみると、東京・吉祥寺にある中国料理店「中国菜四川雲蓉」のオーナー、北村和人さんが毛豆腐を作っているのを発見しました。日本では毛カビを入手することが難しいので、毛豆腐を手作りされている方は、大変珍しいと思います。
店名 | 中国菜四川雲蓉(ユンロン) |
住所 | 東京都武蔵野市吉祥寺本町2丁目14−1 |
電話番号 | 0422-27-5988 |
営業時間 | 18時00分~22時00分 | 11時30分~14時30分
定休日 | 火曜日・水曜日 |
オープン日 | 2018年12月23日 |
https://mobile.twitter.com/fmnvhdzvgu8rbug | |
https://www.facebook.com/yunrong1102/ |
北村和人さんは、中国四川省・成都で修行したのち、日本の有名四川料理店で経験を積んだシェフです。時間をかけて仕込む数々の料理は、現代の中国でもなかなか食べられないクオリティなのだとか。お店で使われている、辣油・ネギ油・山椒油などの油・ガラスープ・豆板醤・甜麺醤など、作れるものはできるだけ、手作りされています。
「多くのお客様にいらしていただいてとても嬉しいのですが、実はもっとやりたいことがたくさんあって。現地で使われる発酵食品や発酵調味料をもっと作りたいんです。ただ、作るのに1年や2年とかかるものなので、徐々に取り掛かるつもりです。あと、伝統料理だけだと内容が濃すぎるので、現地の日常的なスナックみたいなものをデザートや食間に加えたいと考えています。そういったものによって、お客様が“隙”というか、遊び心を感じられるようなお店にしたいですね」
引用元 dressing
毛豆腐が、通常メニューではない可能性は高いです。ただ、公開されているSNSのコメント欄を見ていると、どうしても毛豆腐を食べてみたい方は、お店に相談してみる価値はあるのかもしれない、という印象を受けました。
まとめ
強烈なインパクトのある毛豆腐ですが、調べを進めるうちに、好奇心がそそられ、食べてみたくなってきました。過去には、【発酵食品アドバイザー・アジアの発酵食品研究家】大西孝典さんが、オンラインで毛豆腐を作るセミナーを開催されています。日本ではなかなか難しいかもしれませんが、今後、毛豆腐を食べる機会があれば、ぜひ挑戦してみたいです。
それでは、本記事のまとめです。
- 毛豆腐は、約600年の歴史を持つ、安徽省黄山市の伝統食品。
- 明の初代皇帝・朱元璋が毛豆腐を広めたという伝説がある。
- 毛豆腐を使った料理と言えば、虎皮毛豆腐。
- 毛豆腐の特徴的な臭気や食感は、好き嫌いが分かれる。
- 東京・吉祥寺にある中国料理店「中国菜四川雲蓉」のオーナーは、毛豆腐を手作りしている。
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